インターネットの速さってなんだ

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最近色々あって、インターネット回線について語っているサイトを見ていました。
何というか、中途半端な記事も多く(一般向けだから仕方ないけど)、結局よくわからないことを書いているところもあったので、一度整理してみたいと思います。


まず、インターネットに限らず、ネットワークそのものの速度の要素は、おおざっぱに言うと以下のものが挙げられます。
※細かいことをいうと、他にも諸々あるのですが省略。

①回線の規格上の通信帯域(Bandwidth)
その回線の規格上で定められている、ある地点からある地点まで、1度に運ぶことができるデータの量です。
例えば、トラックでは2tトラックより10tトラックのほうが、一度に多くのモノを運べますよね?
帯域が大きければ大きいほど、一度にデータを多く運べます。
通信帯域には、「アップストリーム(上り)」と「ダウンストリーム(下り)」(アップロードとダウンロードと言い換えてもいい)があり、両方とも十分確保できているなら良い回線とは言えます。
また、xDSL(ADSL/VDSLなど)やCATVなどは、上りと下りの速度が違う場合(非対称(Asymmetric))があります。
宣伝等では、どちらか早いほう(ほぼ100%下り方向)が表記されることが多いので要注意です。
あと、キャリア(通信事業者)が出している「理論値〇M(G)bps」というのは、あくまでもキャリアの局舎から居宅までの線の規格上の速度(ワイヤレートと呼びます)であって、インターネット上でどこでもその速度が出るという意味ではありません。

②ラウンドトリップタイム(Round trip-time=RTT)
ある地点からある地点までに通信が到達する時間です。
一般的に、ネットワークの物理距離(正確には越えたネットワークルータの数)に比例して遅くなりますので、日本と直接繋がっている中国やアメリカに比べて、ヨーロッパや南米などではRTTが悪化する傾向にあるようです。
※ただし、今では海底ケーブルも色々伸びているので、物理的に遠いからといって、必ずしも遅いというわけでもありません。
例えば、目の前の人に直接話すのと、10人以上で伝言ゲームするのでは、目の前の人に直接話したほうが正確に早く伝わりますよね?それと同じなのです。
通信が到達する時間が短ければ短いほど単位時間の間にデータを多く運べますし、相手からの応答が早く受け取れるのでリアルタイム性が良くなります。
最近はやりのe-sportsなどの用途には不可欠なものです。
また、このRTTは、揺らぎ(ジッタ)が小さければ小さいほど良いです。極端に早くなったり遅くなったりするネットワークは、一般的に音声通話や動画実況配信などには向きません

③通信品質(Packlet loss rate)
ある地点からある地点までの通信の効率です。
通信、特にインターネットは、世界中のネットワーク機器を経由して通信を行うので、どうしてもその途中経路の影響を受けます。
それにより、順序が狂ったり通信中のデータが壊れたりすると、再送という処理が発生します。要は通信のやり直しです。
やり直しが多ければ多いほど、効率が悪くなるのはどんなことでも同じだと思います。
当然、途中経路の通信品質が良ければよいほど効率よくデータを運ぶことができ、結果として単位時間の間にデータを多く運べます。


で、インターネット上でのネットワークの解説を読んでいると、①ばかり気にしていて残りがあまり考慮されていないようで、なんだかな~と思います。
理論上の①よりも、①②③すべてを含めた、実際の速度計測によってのみ得られる実効速度(これも帯域と同じように表記(~Mbpsなど)されますが、混同しやすいです)こそが、評価基準として最も大事です。

また、用途によっても注視しなければならないポイントが異なります。

③はどんな用途でも大前提です(どんな用途で使っても、パケットが1~2%も落ちれば、遅すぎ&エラー連発でイライラすると思います)。

■通話用途
せいぜい64k~128kbpsくらいあれば事足りるのが普通なので、①よりも②のほうが大事です。
通話ではありませんが、e-sportsを楽しむのも、帯域よりも応答速度が命なので、やはり①よりも②のほうが大事ということになります。

■動画を観る(ライブ配信ではないもの)
端末でキャッシュ(一時的なため込み)を行いながら再生するので、②よりも①のほうが大事です。

■動画のライブ配信
①は解像度や圧縮方式によりますが、YoutubeのfullHD解像度(1080p)で4~9Mbpsは必要です。また、②も良くないと動画が止まったり乱れたりすることがあります。


また、度々話題になる回線の種類別でその特性を考えると、以下のようになります。

■ADSLやVDSL
③が厳しい(4kHzしか通すつもりがなかったメタル線に、無理やり30MHzも通そうとします)ので、特に集線がキツい集合住宅(ギューギューに詰め込まれていて、お互いの信号がお互いを邪魔してしまうクロストークが発生しやすい)などでは通信品質の劣化がかなりあるはずです。
ADSLは2016年販売終了、2023年サービス終了と終わりが間近で、同様の技術であるVDSLも、近々なくなる運命にあると思われる技術です。
そもそも、今ではメタル線を使わなくても光回線だけで電話が可能(実はNTTから電力供給され停電時にも使えるメタル線に比べて、可用性の観点からは劣化しますが)なので、メタル線の設備を残しておく積極的な理由がなくなりつつあると考えられます。

■CATV
局舎からMDF(通信業者から来た回線を全部収容して分配する箱)間は光でも、MDF~IDF(MDFから来た回線を再分配する箱)~居宅までの同軸ケーブルでやはり劣化があること。
CATVのインターネットのバックボーン(ネットワーク設備)が貧弱で、インターネットに出るまでの遅延が大きいなどの問題があるようです。

■光ファイバー
言わずと知れた現時点での最速回線です。
メタル線に比べると長距離の通信でも信号の減衰が少なく、また配線経路上での電磁波等の影響を受けにくいという特長があるので通信品質が高く、現代の新規配線は、ほぼこの形式になろうとしています。
欠点は、①メタルに比べて曲げに弱いこと(曲率が高いと損失が大きくなったり、折れてしまったりします)、②給電能力がないので停電時に使用できないことです。
特に①は古いマンションのMDF~IDF~居宅間の配管で、メタル線を想定して設置されているものの場合、曲率が高すぎて設置できない、ということがあります。
※曲率よりも、配管内の空きスペースがない(既設メタル線の除去が事実上不可能なので)という理由でNGの場合が多いようですが。

■そのほかの注意点
光やVDSLで念頭に置く必要があることですが、通常はマンションタイプと戸別タイプがあり、注意を要します。
マンションタイプは基幹線を共有するため、比較的安価に導入・利用できますが、マンションでないと導入できませんし、マンションの戸数が多かったりヘビーユーザーが居ると、通信が遅くなります。
近年、テレワークで通信量が増えているので、若い世代が多い大規模マンションなどでは、基幹の帯域がひっ迫するということも想定に入れておく必要があります。
戸別タイプでは、局舎まで直結するのでマンションタイプのような心配とは無縁ですが、導入・利用コストが高いことや、マンションなどでは導入できないところもあるということを想定しなければなりません。


とめどなく書いてしまいましたが、何かの参考になれば幸いです。